溶けやすい石鹸は、ダメな石鹸ですか?~美肌塾的・良い石鹸の条件~

「石鹸の減りが早い気がします」――そのご相談のたびに思い出すこと
本格的な夏を迎える頃、お客様からこのようなご相談をいただくことがあります。
「いつもより、石鹸の減りが早い気がします」
大切に使ってくださっているからこその、切実なお声です。
確かに、近年の日本の夏は高温多湿であり、密閉されがちな浴室は石鹸にとって非常に過酷な環境です。人間が暑さで体力を消耗するように、石鹸にとっても厳しい季節がやってきたと言えます。
では、環境によって溶けやすくなる石鹸は、使いにくくて「ダメな石鹸」なのでしょうか?
今回は、石鹸のプロとしての視点、環境に左右されない本質的なクオリティ、そしてTampopoせっけんの誕生秘話を交えてお話しいたします。

専門工房に「製品化できない」と言われた、渾身のレシピ
Tampopoせっけんには、肌へのアプローチを極限まで高めるため、
オリーブ油
椿油
マカダミアナッツ油など、
肌にとって良質な天然オイルを贅沢に、かつたっぷりと配合しています。
(7~8種類をベストバランスで配合)
実は、このこだわり抜いた配合は、Tampopoせっけんを製品化するにあたり、非常に大きな壁となりました。
試作の段階で、専門工房からは、
「この割合では成分が安定しません」
「レシピを組み換えて、扱いやすい配合にしてください」
そう告げられたのです。
実際に、この配合の難易度の高さから、
製品化を断念せざるを得なかった工房もありました。
型崩れしにくく、
作り手にとってもお客様にとっても扱いやすく、
コスト面でも安心な、
「一般的な手づくり石鹼レシピ」に組み替えるのであれば、それが商業的な正解だったのかもしれません。
しかし、私は頑なに拒みました。
譲れなかったもの――「手作りの理想」を製品化する意義
料理でも何でもそうですが、
自分や家族のためだけに作る「手作り」であれば、
コスト
効率
世の中の制約
これらは、一切関係ありません。
値段を気にせず、
自分が最高だと思う良い素材を好きなだけ配合した
「究極のレシピ」を再現できるのが、手作りの一番の醍醐味です。
私は元々、自分の肌のために、
そんな究極の配合を追求し続けてきた無類の石鹸マニアです。
ですが、7種類も8種類ものオイルを計量して作り、
1ヶ月以上の熟成期間の間、しっかり管理しながら完成を待つだなんて、
あまりにも手間暇がかかりすぎて、普通は面倒で誰もやりません。
「これは、私にしか作れない石鹸だ」という確信がありました。
簡単に作れるものなら、自分で作った方が良い!
実は私の石鹸作りワークショップでは、
「そこそこ作りやすくて、十分肌に良い石鹸」の
作り方をレクチャーしています。
また、「石鹸屋の美肌塾」では、
化粧水や美容液などの手作りコスメも出し惜しみなくお伝えしています。
なぜなら私は、
簡単に作れて、その方がお肌に良いのであれば、
わざわざ買わずに自分で作った方がいいと思っているからです。
実際、私自身も長年そうやって暮らしてきました。
ただ、石鹸作りは化粧水作りとは少し違います。
材料を揃え、
複数のオイルを計量し、
温度や状態を管理しながら作る石鹸作りは、
どうしても手間も時間もかかります。
「好き」という執着が無いと作り続けられないのです。
だからこそ、
もし私が石鹸を製品として世の中に出すのであれば、
「そこそこ良い石鹸」では意味がないと思いました。
私自身が15年以上かけて追求してきた、
本当に良いと思う配合で届けたい。
せっかく製品化するのなら、
製造の都合や効率を優先するのではなく、
肌のことを最優先に考えた石鹸を届けたい。
工房から、
「このレシピでは安定しません」
「もっと扱いやすい配合に変更してください」
と言われたとき、
私が譲れなかったのはそこでした。
せっかく世の中に送り出すのに、
そこで妥協してしまったら意味がない。
私が石鹸マニアとして積み重ねてきた答え。
『手作りでしか出せない本物の価値』をそのまま製品化して、
必要としている方に届けることにこそ、
私が「Tampopoせっけん」を世に送り出す意義があると感じたんです。
一回きりの洗顔であれば、
よくある手づくり石鹸と、私の目指す石鹸の「使い心地」に、
それほど大きな差は感じられないかもしれません。
ですが、私が目指していたのは「その場限りの使い心地」の、その先です。
- 洗うたびに、あなたの肌を健やかに育てていくこと
- この先ずっと使い続けることで、一生の肌を守り抜くこと
効率的な製造ラインの都合に合わせてレシピを変えてしまっては、
私が社会に対して果たしたい「肌への責任」も、
Tampopoせっけんの魂も消えてしまう。
だからこそ、私は1%だって妥協することはできなかったのです。

職人として挑む、やさしさと使いやすさの「調和」
もちろん、私は「溶けてドロドロになる石鹸」を良しとしているわけではありません。
使いにくさを感じることは私自身も本意ではありませんし、
最後の一片まで気持ちよく、美しく使い切っていただきたいと願っています。
だからこそ、
肌へのやさしさを最優先に据えながらも、
日常の使いやすさ(耐久性)を両立させるために、
納得がいくまで何度も微調整を繰り返してきました。
石鹸づくりとは、
「肌へのやさしさ」と「日常の使いやすさ」という、
相反する要素の最適解を探し続ける仕事でもあるのです。

保湿成分が引き寄せる、夏の水分
それでも、日本の夏の湿気は本当に手強いものです。
Tampopoせっけんは、肌を潤すための天然の保湿成分(グリセリン)がたっぷりと含まれている石鹸です。
このグリセリンには水分を抱き抱える優れた性質があるのですが、
高温多湿な夏は、その力が裏目に出てしまうことがあります。
石鹸が空気中にある水分を、自らの方へと引き込んできてしまうのです。
そのため、
夏場はただ浴室に置いてあるだけでも、
水分を吸って溶けていってしまう可能性が高まります。
だからこそ、この季節だけはみなさまに少しだけお願いがあります。
いつも以上に、石鹸を「乾燥」させてあげてください。
夏場の石鹸を長持ちさせるコツ
- 使用後はしっかりと水を切る
- シャワーの水がかかる場所を避けて保管する
- できれば風通しの良い場所で乾燥させる
ほんの少しの気遣いだけで、石鹸の持ちは劇的に変わります。
ありがたいことに、
Tampopoせっけんをご愛用くださっているお客様の中には、
夏場にドロドロに溶けてしまった石鹸も、
そのドロドロを上手にすくい、
そのまま泡立てて最後まで美しく使い切ってくださる方がいらっしゃいます。
それは、
たとえ夏の水分を含んで形が変わろうとも、
中に息づく天然オイルと、天然グリセリンの豊かな価値は一滴も損なわれないことを、
肌を通してご存知だからです。
私たちが目指す、これからのものづくり
だからTampopoせっけんは、
決して効率から生まれた石鹸ではありません。
肌のことを考え続けた先にたどり着いた、
私なりのひとつの答えなのです。
せっかく世の中に送り出すのなら、
私が本当に良いと思うものを届けたい。
その揺るぎない信念の上に、できる限りの快適な使い心地を追求していく。
それこそが、Tampopoせっけんの誇るものづくりです。
間もなく本格的な夏の到来です。
みなさまのデリケートな肌を守るパートナーとして、
ぜひ、ご自宅の石鹸にもほんの少しの「優しさ(水切り)」を添えて、
この季節を快適にお過ごしくださいね。




